傷病手当金に関するよくあるご質問
- 傷病手当金とはどんなものですか?
- 傷病手当金はどの程度受け取れますか?
- いつから支給されますか?
- 受給可能な期間はいつまでですか?
- 退職してからも傷病手当金を受給できますか?
- 傷病手当金は勤め先から出るのですか?
- 申請はどこにしたらいいのですか?
- 申請を行う際に何が必要ですか?
- 申請の期間はどうしたらいいですか?
- 転院手続きはどうしたらいいですか?
- 傷病手当金の申請で必要な診断書の費用はいくらですか?
- 会社に病名を知られたくない場合、どうしたらいいですか?
- 失業手当と傷病手当金を両方受け取れますか?
- 雇用保険の傷病手当は健康保険の傷病手当とは違うものですか?
- 傷病手当金は、労災保険や障害年金と同時受給できますか?
傷病手当金とはどんなものですか?
働いている方が怪我や病気などで働けなくなった際に、生活保障のために支給される健康保険の制度です。受給のためには、一定の基準を満たした上で申請手続きが必要となります。
ただし、傷病手当金の制度は全国健康保険協会、共済組合、組合健保には備わっていますが、国民健康保険にはありません。自営業やフリーランスで国民健康保険に加入している場合には、傷病手当金の制度を利用できませんので、ご注意ください。
傷病手当金はどの程度受け取れますか?
基本的に給料の3分の2となっています。1日あたりの支給額は、支給スタート前の過去12か月の給与を平均した額を30日で割り、そこに2/3をかけたものです。なお、傷病手当金は非課税扱いになりますので、所得税などはかかりません。
いつから支給されますか?
傷病手当金は、3日間の待機期間が設けられており、連続3日休んでから、4日目以降の休みに対して支給されます。なお、待機期間については、それ以外にもいくつかの基準があります。
- 3日間に公休日や有給休暇取得日が含まれる場合も待機期間に算入されます。
- 早退し、翌日から休みはじめた場合は、早退した日が待機初日となります。
- 連続3日間休み、その後に引き継ぎなどで1日出勤し、翌日から休みはじめた場合も待機期間が完成しているとみなされます。
受給可能な期間はいつまでですか?
令和4年1月1日より、支給開始日から通算して1年6か月となっています。傷病手当金を受給して1年で復職し、6か月以上働くことができた場合、傷病手当金は1年分のみを受給できます。以前と異なり、出勤などで傷病手当金を受給していない期間を間に挟んでいる場合、その期間を除いた1年6か月となります。ただし、傷病手当金は、1つの病気に対して生涯で受給できる期間が最長で1年6か月となっているため、基本的に同じ病名で2回以上の受給はできません。
退職してからも傷病手当金を受給できますか?
傷病手当金受給は、健康保険の資格を有している期間のみ有効ですが、下記の条件を満たす場合には退職後にも傷病手当金を受給できます。
- 資格喪失日の前日までに継続して1年以上被保険者であった場合
- 資格を喪失した際に、傷病手当金の支給をすでに受けていた、または受けられる状態であった場合
※受けられる状態とは、待機期間を満たしており、報酬額などとの調整のために傷病手当金の支給が停止されている状態です。
傷病手当金は勤め先から出るのですか?
会社を通じて加入している健康保険から給付されます。傷病手当金の制度があるのは、協会けんぽ、共済組合、組合健保などであり、給料ではありませんので会社から出るわけではありません。また、傷病手当金は所得とはみなされず、所得税などの税金もかかりません。
申請はどこにしたらいいのですか?
通常は、総務、人事、労務などの部署が窓口となっており、傷病手当金の申請書類を受け取ることができます。書類を受け取って記入し、提出してください。会社は受け取った書類に必要事項を記入した上で健保組合に申請し、手続きが終われば給付となります。上司が傷病手当金について知らないというケースもありますので、その際には、ご自分で人事などに相談するか、上司に確認してもらうなどが必要となります。また、小さい会社では、傷病手当金について理解している方がいない場合もあります。そうした場合には、保険証に記載のある健保組合に相談しましょう。健保組合への問い合わせはご本人からでも、会社からでも問題ありません。
申請を行う際に何が必要ですか?
総務や人事、労務などの部署に問い合わせて所定の申請書類を受け取ります。ご自分で記入し、主治医にも記入してもらいます。当院では、持参頂いた申請用紙へ診断した内容を記載して発行しています。ご自分と主治医の記載ができた申請書類を会社に提出すると、会社は事業主が記入する欄に記入します。事業主が記入した内容を確認した上で、初診日や療養のために休んだ期間をご自分で記入し、改めて会社に提出すると会社から健保組合に申請がなされます。なお、支給に関して判断するのは健保組合ですので、記載した通りに傷病手当金の支給が必ず受けられるとは限りません。
各記入欄について
事業主の記入欄
会社に記入してもらう部分です。ご本人が働けなかった期間を証明するために勤め先を記入してもらいます。総務や人事などが窓口となって手続きが可能ですが、不明な点がある場合には健保組合に問い合わせてください。
主治医の記入欄
受診する際に申請書類をご持参し、主治医に直接お渡しください。診療に従って主治医が記入し、発行します。申請書類で医師が意見書を発行する場合、発行ごとに費用がかかります。
なお、初回申請では有給休暇などは関係なく、主治医が労務不能の状態であると認めた期間がそのまま記入されます。
ご本人の記入欄
ご自分の住所、保険証、振込口座、マイナンバーなどを記入します。
傷病名の欄について
主治医に記入してもらった後で、診断を受けた通りの傷病名を記入します。自己判断で記入せず、必ず主治医から診断を受けた正式の傷病名をご記入ください。
初診日・療養のために休んだ期間について
主治医の記入と事業主の記入を確認した上で、その通りの日付を記入してください。自己判断で先に記入してしまうと齟齬が生じて証明できなくなる可能性があります。なお、初診日(療養の給付開始年月日)の欄は、診療開始日などと書かれている場合もあります。最初に医療機関を受診した日であり、傷病手当金給付の開始日ではありません。
発病時の状況の欄について
申告書類によっては、ご本人記載欄に「発病時の状況」という項目が存在する場合があります。その際には、「不詳」と記入してください。精神疾患では多くの場合、複数の原因が関与して発症していますので、不詳としておく方が無難です。なお、主治医が記入する部分にも発症時の状況を伝える欄があり、明らかな原因がはっきりわかっている場合にはそちらに記載されますので、その内容をそのまま写すのでも構いません。
継続申請について
前回の続きの日から記入しますが、継続申請に関しては申請期間が決まっているケースがよくあります。指定された期間のうち、主治医が労務不能と認めた期間で記入し、発行しています。診断と指定された期間が同じであれば問題ありませんが、主治医が書類を記入した日以前の期間について発行され、受診日より先の日は記載できません。
申請の期間はどうしたらいいですか?
申請期間に制限はありませんが、先の日付に対して労務不能診断ができませんので傷病手当金は事後申請となります。申請期間を半年とした場合は、その期間が過ぎるまで無収入になってしまいますので、毎月受け取れるようにするには、1か月ごとに申請する必要があります。
なお、会社によっては、申請を決まった期間で行うよう定められているケースがあります。その場合は、それに合わせて期間ごとに申請書類を受け取り、主治医に記入してもらう必要があります。
また、労作不能と認める期間に関して3か月分の記入しかできないなど、申請書類の書式により申請期間が決まっている場合もあります。そうした部分にも注意が必要です。
転院手続きはどうしたらいいですか?
傷病手当金の受給中に転院する場合も、転院先の病院で傷病手当金に関する対応を受けられます。当院でも、転院されてきた方の傷病手当金の対応を行っています。傷病手当金の申請書へ医師が記入できるのは、実際に診察した期間のみとなっています。転院前に受診していた医師は自分が最後に診察した日までの記入しかできず、転院した先の医師は自分が初めて診察した日からのことだけを記入できます。その間に空白期間が数日ある場合、その数日分の傷病手当金は受け取ることができません。転院する際には、こうした労務不能状態を証明できない期間を作らないようにしましょう。具体的には、転院前に紹介状を書いてもらい、それを持ってセカンドオピニオンとして転院先の病院を受診します。以前かかっていた病院の通院をしなくなる前に転院先を受診しておくことで、連携した治療が可能になり、患者様のこれまでの経過や状況をしっかり把握できます。その後に、以前かかっていた病院をもう1度受診し、転院した病院での初診日までの期間について、労務不能状態であったことを証明してもらいます。受診の手間や申請書の枚数が増えますが、この方法であれば空白期間なしで労務不能状態を証明できます。
なお、紹介状がない転院も可能ですが、その場合、診察は最初からとなり、最適な治療を行うまでに時間がかかってしまう可能性があります。
傷病手当金の申請で必要な診断書の費用はいくらですか?
傷病手当金の申請書に主治医が記入を行った場合、診察料以外に傷病手当金意見書交付料がかかります。健康保険が適用され、3割負担の場合の傷病手当金意見書交付料は300円となります。
会社に病名を知られたくない場合、どうしたらいいですか?
基本的に、傷病手当金の申請は休職状態で行われ、休職するための診断書を提出するケースがほとんどを占めます。診断書には病名を記載する欄があり、診断書で病名を知られないようにすることはできません。
ただし、短期間の休職などであれば、お薬手帳や病院の領収書などで認めるという会社もまれに存在します。その場合、傷病手当金の申請を被保険者である患者様ご本人が健保組合に直接申請することで、会社には病名を伝えずに申請できる場合もあります。申請書類には事業主が記入する欄がありますので、その場合にはご本人や主治医の記入前に事業主に記入してもらう必要があります。ただし、会社によっては自己申請の前例がなく、できないと誤解している場合もあります。制度上では可能となっていますので、健保組合に問い合わせて自己申請について教えてもらい、その内容を伝えると良いでしょう。
失業手当と傷病手当金を両方受け取れますか?
傷病手当金と失業手当は同時に受給できません。失業手当は「働けるが仕事がない」場合に支給されますが、傷病手当は職があっても病気や怪我により療養が必要で働くことができない「労務不能」の期間に支給されるものだからです。
ただし、休職して傷病手当金を受給し、退職して満了まで傷病手当金を受給して、その後、失業保険を受給することは可能です。こうした際には、失業手当の受給基準を満たした上で、医師の診断なども必要になります。
雇用保険の傷病手当は健康保険の傷病手当とは違うものですか?
雇用保険には、失業状態で求職活動を行っている期間に経済的な補償を受けられる基本手当以外にも、傷病手当があります。雇用保険の傷病手当は、失業している間の怪我や病気によって求職活動ができない状態になった場合に受給でき、受給の申請はハローワークで行います。健康保険の傷病手当とは制度、申請する対象、条件が異なります。
傷病手当金は、労災保険や障害年金と同時受給できますか?
公的給付金制度には様々なものがありますが、労災保険、老齢年金、障害年金などの公的給付金制度と同時に傷病手当金を受給することはできません。
ただし、労災保険、老齢年金、障害年金の給付金額が傷病手当金の支給額を下回る場合、差額を受け取ることができます。なお、失業手当に関しては同時受給が不可能です。