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依存症

依存症とは


いわゆる「依存症」には、大きく分けて「物質使用によるもの」と、「嗜癖行動によるもの」の二種類があります。物質使用による代表的なものはアルコール、薬物がありますし、嗜癖行動については、ギャンブルやゲームがあげられます。ある物質、あるいはある種の行動が、その人にとって最も優先すべきものとなり、生活に支障をきたす状態です。最近はいわゆる「ギャンブル依存」や「ゲーム依存」が話題に上がることも多く、医学的にもこのような行動が従来の依存症の脳内メカニズムに近いことがわかってきています。WHOの国際疾病分類ICD11でも、ギャンブルに関連する問題は、嗜癖行動症群として分類が変わり、いわゆる依存症の一部として扱われるようになりました。

依存症の原因

アルコールや特定の薬物などの物質を摂取したり、ギャンブルなどの特定の行動は、脳神経を興奮させ、高揚感、快楽を引き起こす物質の一つであるドーパミンを分泌します。それを繰り返し、ドーパミンを分泌する回路が形成される過程で、高揚感、快楽といった報酬が以前と同じ刺激では得られなくなり、さらなる報酬を求めて特定の物質の摂取や行動がエスカレートすると考えられています。

依存症の症状

精神依存と身体依存に分けて考えられます。精神依存とは、特定の物質や行動を使用せずにはいられなくなった精神状態であり、日常生活の最優先事項となってしまうことです。また、身体依存とは、その物質の使用を中止すると離脱症状(後述)が出現するようになる状態です。身体依存については、原因によっては形成されにくいものもあります。

重要な症状

ここでは原因をアルコールや薬物として説明しますが、嗜癖行動にも多くはあてはまる重要な症状です。

  • 習慣性:アルコールや薬物の反復使用の結果、それがもたらす幸福感のため服用を継続したいという欲求(精神依存)です。
  • 耐性:アルコールや薬物を反復使用していると、その効果が次第に減弱し、当初と同じ効果を得るには用量を増やさねばならない現象です。
  • 離脱症状:アルコールや薬物の反復使用によって身体依存が形成されているときに、その原因物質を中断すると出現する病的な症状で、身体依存の指標になります。発汗、振戦、不眠などのさまざまな身体的症状や、不安、幻覚などの精神的症状、アルコールや一部の薬物の場合には意識障害、けいれんなどの重篤な症状も出現することがあります。
  • 探索行動:離脱症状による苦痛を避けるために、何としてもアルコールや薬物を手に入れようとする行動です。

代表的なスクリーニングテスト

アルコール依存症(AUDIT)

全部で10問の各質問に0~4点で回答、合計点(0~40点)で以下のように評価します。

1~9点 危険の少ない飲酒
10~19点 危険または有害な飲酒
20点以上 アルコール依存症の疑い

1. あなたはアルコール含有飲料をどのくらいの頻度で飲みますか?

0 .飲まない
1 . 1 カ月に 1 度以下
2 . 1 カ月に 2 ~ 4 度
3 . 1 週に 2 ~ 3 度
4 . 1 週に 4 度以上

2. 飲酒するときには通常どのくらいの量を飲みますか?

0 . 1 ~ 2 ドリンク
1 . 3 ~ 4 ドリンク
2 . 5 ~ 6 ドリンク
3 . 7 ~ 9 ドリンク
4 . 10 ドリンク以上

3. 1 度に 6 ドリンク以上飲酒することがどのくらいの頻度でありますか?

0 .ない
1 . 1 カ月に 1 度未満
2 . 1 カ月に 1 度
3 . 1 週に 1 度
4 .毎日あるいはほとんど毎日

4. 過去 1 年間に、飲み始めると止められなかったことが、
どのくらいの頻度でありましたか?

0 .ない
1 . 1 カ月に 1 度未満
2 . 1 カ月に 1 度
3 . 1 週に 1 度
4 .毎日あるいはほとんど毎日

5. 過去 1 年間に、普通だと行えることを飲酒していたためにできなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?

0 .ない
1 . 1 カ月に 1 度未満
2 . 1 カ月に 1 度
3 . 1 週に 1 度
4 .毎日あるいはほとんど毎日

6. 過去 1 年間に、深酒の後体調を整えるために、
朝迎え酒をせねばならなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?

0 .ない
1 . 1 カ月に 1 度未満
2 . 1 カ月に 1 度
3 . 1 週に 1 度
4 .毎日あるいはほとんど毎日

7. 過去1年間に、飲酒後罪悪感や自責の念にかられたことが、
どのくらいの頻度でありましたか?

0 .ない
1 . 1 カ月に 1 度未満
2 . 1 カ月に 1 度
3 . 1 週に 1 度
4 .毎日あるいはほとんど毎日

8. 過去1年間に、飲酒のため前夜の出来事を思い出せなかったことが、
どのくらいの頻度でありましたか?

0 .ない
1 . 1 カ月に 1 度未満
2 . 1 カ月に 1 度
3 . 1 週に 1 度
4 .毎日あるいはほとんど毎日

9. あなたの飲酒のために、あなた自身か他の誰かがけがをしたことがありますか?

0 .ない
2 .あるが、過去 1 年にはなし
4 .過去 1 年間にあり

10. 肉親や親戚、友人、医師、あるいは他の健康管理にたずさわる人が、
あなたの飲酒について心配したり、
飲酒量を減らすように勧めたりしたことがありますか?

0 .ない
2 .あるが、過去 1 年にはなし
4 .過去 1 年間にあり

ギャンブル依存症(PGSI)

全部で9問の各質問に0~3点で回答、合計点(0~27点)で以下のように評価します。

0点 非問題ギャンブラー(non-problem gambler)
1~2点 低リスクギャンブラー(low risk gambler)
3~7点 中等度問題ギャンブラー(moderate)
8~27点 問題ギャンブラー(problem gambler)

1. 過去12か月間について考えてください。
どのくらいの頻度で、失っても本当に大丈夫な金額以上のお金を賭けましたか。

0.まったくない
1.ときどき
2.たいていの場合
3.ほとんどいつも

2. 過去12か月間について考えてください。
どのくらいの頻度で、同じだけの興奮の感覚を得るために、
それまでよりも多くの金額をギャンブルに費やさねばなりませんでしたか。

0.まったくない
1.ときどき
2.たいていの場合
3.ほとんどいつも

3. 過去12か月間について考えてください。
どのくらいの頻度で、ギャンブルで負けた金額を取り返そうと、
別の日にギャンブルをしに戻りましたか。

0.まったくない
1.ときどき
2.たいていの場合
3.ほとんどいつも

4. 過去12か月間について考えてください。
どのくらいの頻度で、ギャンブルをするお金を得るために借金をしたり、
物を売ったりしましたか。

0.まったくない
1.ときどき
2.たいていの場合
3.ほとんどいつも

5. 過去12か月間について考えてください。
どのくらいの頻度で、自分がギャンブルに関して問題を抱えているかもしれないと感じましたか。

0.まったくない
1.ときどき
2.たいていの場合
3.ほとんどいつも

6. 過去12か月間について考えてください。
どのくらいの頻度で、あなたがその通りだと思うかどうかに関わらず、
周囲の人々があなたが賭け事をすることを批判したり、
あなたがギャンブルの問題を抱えていると言ってきたりしましたか。

0.まったくない
1.ときどき
2.たいていの場合
3.ほとんどいつも

7. 過去12か月間について考えてください。どのくらいの頻度で、
自身のギャンブルのやり方や、ギャンブルの結果として起こることについて、
悪いとか申し訳ないと感じましたか。

0.まったくない
1.ときどき
2.たいていの場合
3.ほとんどいつも

8. 過去12か月間について考えてください。
どのくらいの頻度で、ギャンブルが健康問題を引き起こしましたか。
これにはストレスや不安も含みます。

0.まったくない
1.ときどき
2.たいていの場合
3.ほとんどいつも

9. 過去12か月間について考えてください。
どのくらいの頻度で、ご自身のギャンブルによって、
あなたやご家庭に金銭的問題が引き起こされましたか。

0.まったくない
1.ときどき
2.たいていの場合
3.ほとんどいつも

(久里浜医療センターホームページより参照)

依存症の治し方

基本的には原因となっているアルコールや薬物、嗜癖行動の中止です。身体依存が形成されている場合には、重篤な離脱症状が出現する場合がありますので、アルコールや睡眠薬、抗不安薬の中断は、医療機関と協力しながら行います。しかしながら、治療の開始にあたって最も難しいのが、ご本人が治したいと希望されるかです。多くの専門家が、「依存症は否認の病である」と指摘します。家族などの周囲の方が依存症を疑い、治療の必要性を説明しても、ご本人が依存症を認めず、治療を拒否することがあります。ご本人が治したいという気持ちになれるよう、依存症によって引き起こされた問題を責めたり、問題解決を肩代わりしてしまうことのない対応が重要です。また、いったん治療を開始しても、ストレス負荷など何かのきっかけで再燃してしまうのも特徴の一つです。「依存症の原因をやめ続ける」ことを目的に、医療機関だけではなく、地域の自助グループで“先輩”や“仲間”のサポートを得ることも助けになります。当院では、精神保健福祉士がこのような地域のサポートへの連携をお手伝いすることができます。